高卒採用の基礎知識

デュアルシステムとは?企業が知っておくべき学校連携の仕組み

著者: 株式会社ゆめスタ
デュアルシステムとは?企業が知っておくべき学校連携の仕組み

「高校生を採用したいが、ミスマッチが心配」「長期インターンシップを導入したいが、どう始めればいいか分からない」そんな悩みを抱えていませんか?

実際に、多くの中小企業が高卒採用で苦労している一方で、デュアルシステムを活用している企業は、ミスマッチの少ない採用に成功しています。しかし、この制度の存在を知っていても、具体的な仕組みや導入方法が分からず、活用できていない企業が多いのが現状です。

この記事では、デュアルシステムの基本的な仕組みから、企業側のメリット、導入の具体的な方法まで、わかりやすく解説します。

この記事で分かること

  • デュアルシステムの基本的な仕組み
  • インターンシップとの違い
  • 企業が得られる5つのメリット
  • デュアルシステムの導入方法
  • 実施校と連携の進め方

読了時間: 約7分


目次

  1. デュアルシステムとは
  2. インターンシップとの違い
  3. 企業が得られる5つのメリット
  4. デュアルシステムの実施方法
  5. デュアルシステム実施校との連携
  6. まとめ

デュアルシステムとは

デュアルシステムの定義

デュアルシステムとは、学校と企業が一体となって生徒を育成する新しい職業教育の仕組みです。

デュアル(Dual) = 二重の、2つの

学校での座学教育と、企業での実践的な職業訓練を組み合わせることで、即戦力となる人材を育成します。

日本版デュアルシステムの誕生

もともとドイツで発展した職業教育制度を、日本の教育制度に合わせて導入したものが「日本版デュアルシステム」です。

背景:

  • ニート・フリーターの増加
  • 若年者の早期離職問題
  • 企業の人材育成負担の増大
  • 実践的な職業教育の必要性

これらの課題に対応するため、文部科学省と厚生労働省が連携して、2004年から「日本版デュアルシステム」を推進しています。

デュアルシステムの特徴

1. 長期間の企業実習

単発のインターンシップではなく、1年間にわたって継続的に企業で実習を行います。

2. 単位として認定

企業での実習が学校の正式な単位として認められます。

3. 学校と企業の密接な連携

学校と企業が共同でカリキュラムを設計し、生徒の成長を見守ります。

4. 即戦力人材の育成

実践的なスキルと社会人としての基礎力を同時に身につけます。


インターンシップとの違い

デュアルシステムとインターンシップの比較

項目 デュアルシステム インターンシップ
期間 1年間(週1日) 1日〜数週間
頻度 毎週継続的 単発または短期
単位認定 あり(6単位程度) なし(または少ない)
カリキュラム 学校と企業が共同設計 企業主導
目的 即戦力人材の育成 職場体験・会社理解
採用との関係 採用前提が多い 採用前提ではない

デュアルシステムの実施例

東京都立工業高校の例:

  • 実施日: 毎週水曜日(1年間)
  • 実習時間: 7時間
  • 単位数: 6単位
  • 対象: デュアルシステム科の生徒
  • 開始時期: 2年生から

生徒は週4日間学校で学び、週1日は企業で実習を行います。これを1年間継続することで、実践的なスキルと職業観を身につけます。


企業が得られる5つのメリット

メリット1: 採用ツールとして活用できる

即戦力人材の確保

1年間の実習を通じて、生徒の適性や能力を見極めることができます。

ミスマッチの防止

企業と生徒がお互いを深く理解した上で採用に進めるため、早期離職のリスクが大幅に減少します。

データ:

  • デュアルシステム経由の採用: 3年離職率 約15-20%
  • 通常の高卒採用: 3年離職率 40.8%

削減効果: 約20ポイント改善


メリット2: 助成金制度を活用できる

キャリア形成促進助成金

デュアルシステムで訓練を行った企業は、訓練経費と賃金の一部について助成金を受けられます。

助成率:

  • 中小企業: 訓練経費・賃金の1/3〜1/2
  • 大企業: 訓練経費・賃金の1/4〜1/3

例:

  • 訓練経費: 年間30万円
  • 助成金(中小企業・1/2): 15万円
  • 実質負担: 15万円

実際に、株式会社ゆめスタが運営するゆめアカでは、このような助成金の活用方法を含めて、企業様のデュアルシステム導入をサポートしています。


メリット3: 中小企業でも優秀な人材を確保できる

採用活動の負担軽減

中小企業にとって、採用活動に多くの時間や人材を割くことは困難です。デュアルシステムは、学校が窓口となってマッチングをサポートするため、採用活動の負担が軽減されます。

学校からの推薦

デュアルシステムを実施することで、学校からの信頼を得られ、優秀な生徒の紹介を受けやすくなります。


メリット4: 社会的責任(CSR)を果たせる

人材育成への貢献

若年者の職業教育に協力することで、企業に求められる社会的責任を果たすことができます。

地域貢献

地元の工業高校と連携することで、地域の人材育成に貢献し、企業のイメージ向上にもつながります。


メリット5: 既存社員の指導力が向上する

OJT担当者の成長

生徒を指導することで、既存社員の教育スキルや責任感が向上します。

組織の活性化

若い生徒を受け入れることで、職場に新しい風が吹き込み、組織全体が活性化します。


デュアルシステムの実施方法

企業実習の基本的な流れ

ステップ1: 学校との連携(4-6月)

デュアルシステムを実施している工業高校に連絡し、受け入れの意思を伝えます。

ステップ2: 実習内容の打ち合わせ(6-7月)

学校と企業で、以下の内容を協議します:

  • 実習の目標
  • 実習内容とスケジュール
  • 指導体制
  • 安全管理

ステップ3: 生徒とのマッチング(7-8月)

学校から生徒を紹介され、企業見学や面談を経て、受け入れる生徒を決定します。

ステップ4: 事前準備(8-9月)

  • 指導担当者の選定
  • 実習場所の整備
  • 安全教育の準備
  • 保険の確認

ステップ5: 企業実習の開始(9-10月)

2年生の秋から、毎週1日(例: 水曜日)の企業実習がスタートします。

ステップ6: 継続的な実施(翌年6-7月まで)

約1年間、毎週継続的に実習を行います。

  • 月次報告書の提出
  • 学校との定期的な連絡
  • 生徒の成長を確認

ステップ7: 実習終了と評価(翌年7月)

実習を終了し、学校と企業で生徒の成長を評価します。

ステップ8: 採用選考(翌年7-9月)

3年生の夏に、デュアルシステムで受け入れた生徒を正式に採用するかどうかを決定します。


企業実習のプログラム例(製造業)

1年間のカリキュラム例:

10-12月(導入期):

  • 会社・工場のルールと安全教育
  • 5S活動の理解と実践
  • 基本的な工具の使い方
  • 簡単な作業の体験

1-3月(基礎習得期):

  • 機械の操作方法(指導員の監督下)
  • 部品の加工・組み立て
  • 品質管理の基礎
  • 報告・連絡・相談の実践

4-6月(応用期):

  • より高度な作業への挑戦
  • 複数工程の担当
  • トラブル対応の学習
  • チームでの作業

指導のポイント

1. 段階的な指導

いきなり難しい作業を任せず、基礎から段階的に教えます。

2. 肯定的なフィードバック

できたことを褒め、改善点は具体的に伝えます。

3. 社会人としての基礎を教える

  • 時間厳守
  • 挨拶・返事
  • 報告・連絡・相談
  • 整理整頓

4. 安全第一

高校生は経験が浅いため、安全管理を徹底します。


デュアルシステム実施校との連携

デュアルシステムを実施している主な高校

東京都:

  • 東京都立六郷工科高等学校(ものづくり工学科)
  • 東京都立葛西工科高等学校(デュアルシステム科)
  • 東京都立多摩工科高等学校(デュアルシステム科)
  • 東京都立田無工科高等学校

その他の地域:

  • 茨城県立日立工業高等学校
  • 宮城県一迫商業高等学校
  • 長野県須坂創成高等学校

確認方法: お近くの工業高校・商業高校に問い合わせて、デュアルシステムを実施しているか確認しましょう。


学校との連携で重要なポイント

1. 長期的な関係構築

デュアルシステムは単年度で終わりではありません。毎年継続的に受け入れることで、学校との信頼関係が深まります。

2. 定期的な情報共有

月1回程度、学校と生徒の様子を共有します。

  • 実習での様子
  • 成長した点
  • 課題や改善点

3. 学校行事への参加

可能であれば、学校の進路説明会や保護者会に参加し、企業の魅力を伝えます。

4. 他企業との情報交換

デュアルシステムを実施している他の企業と情報交換をすることで、より良い受け入れ体制を構築できます。


導入時のよくある質問

Q1. 受け入れに費用はかかりますか?

A. 基本的に、生徒への給与支払いは不要です。ただし、交通費や昼食代を企業が負担するケースもあります。助成金制度を活用すれば、実質的な負担を軽減できます。

Q2. 毎週受け入れるのは難しいのですが...?

A. 学校と相談の上、隔週や月2回などの調整も可能です。ただし、継続性が重要なため、できるだけ定期的な受け入れが望ましいです。

Q3. 何名まで受け入れられますか?

A. 企業の規模や指導体制によりますが、1-3名程度が一般的です。無理のない人数から始めましょう。

Q4. 実習中に事故が起きたら?

A. 学校側で災害傷害保険に加入しているケースがほとんどです。詳細は学校に確認しましょう。

Q5. デュアルシステムで受け入れた生徒を必ず採用しなければいけませんか?

A. 必須ではありません。ただし、多くの場合、企業と生徒の双方が採用を前提として参加しています。


まとめ

重要ポイント

デュアルシステムについて、以下のポイントを押さえておきましょう:

  • デュアルシステムは学校と企業が連携する職業教育の仕組み
  • 1年間・毎週1日の長期実習が特徴
  • 企業実習が正式な単位として認定される
  • 採用のミスマッチを防ぎ、離職率を20ポイント改善できる
  • 助成金制度を活用して実質負担を軽減できる
  • 東京都を中心に多くの工業高校で実施されている

デュアルシステムのメリット(再確認)

  1. 採用ツールとして活用できる(ミスマッチ防止)
  2. 助成金制度で費用負担を軽減できる
  3. 中小企業でも優秀な人材を確保できる
  4. **社会的責任(CSR)**を果たせる
  5. 既存社員の指導力が向上する

次にすべきこと

  1. 近隣の工業高校に問い合わせする
  2. デュアルシステムの実施状況を確認する
  3. 受け入れ体制を社内で検討する
  4. 学校を訪問して詳細を聞く
  5. 助成金制度について調べる

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この記事は、株式会社ゆめスタが運営するゆめスタアカデミー(ゆめアカ)が提供しています。 高卒採用・インターンシップ支援の実績とノウハウをもとに、 中小企業の採用成功をサポートしています。

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