「製造業で若手の技術者が採用できない」「工業高校とどうやって関係を作ればいいか分からない」そんな悩みを抱えていませんか?
工業高校は、専門的な技術や知識を持つ生徒が多く、製造業にとって貴重な人材供給源です。しかし、単に求人票を出すだけでは採用につながりにくいのが現実です。
この記事では、工業高校との効果的な連携方法として、デュアルシステムや課題研究への協力を通じた採用戦略を具体的に解説します。学校との深い信頼関係を構築し、優秀な技術系人材を安定的に採用する方法が分かります。
この記事で分かること
- デュアルシステムと課題研究の仕組みと企業側のメリット
- 工業高校と連携するための具体的なステップ
- 連携を通じた採用成功事例
- 中小企業でも実践できる連携方法
読了時間: 約6分
目次
デュアルシステムとは?工業高校との連携の仕組み
デュアルシステムの基本
デュアルシステムとは、学校での座学と企業での実習を並行して行う職業教育システムです。ドイツの職業訓練制度をモデルに、日本でも2000年代から導入が進んでいます。
仕組み:
- 生徒は週1回(通常水曜日)、提携企業で実習を行う
- 年間を通じて同じ企業で継続的に就業体験
- 実習は工業教科の「業実習」として6単位認定
- 企業と生徒の合意があれば、卒業後にそのまま就職も可能
実施校の例(2025年時点):
- 東京都立六郷工科高等学校(デュアルシステム科)
- 東京都立葛西工科高等学校(デュアルシステム科)
- 東京都立多摩工科高等学校(デュアルシステム科)
- 茨城県立日立工業高等学校
- その他、全国の工業高校で導入が拡大中
企業側のメリット
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早期接触による優秀人材の確保 生徒の適性や人柄を長期間かけて見極められます。1年間の実習を通じて「この生徒と一緒に働きたい」と思える人材を発見できる可能性が高まります。
-
ミスマッチの防止 生徒側も企業の雰囲気や仕事内容を理解した上で就職を選べるため、入社後の早期離職リスクが大幅に減少します。
-
即戦力化のスピードアップ 高校時代から自社の設備や作業手順に慣れているため、入社後の教育コストが削減できます。
-
学校との強固な信頼関係 デュアルシステムに協力することで、学校から「生徒を安心して任せられる企業」として認識され、翌年以降も優先的に推薦を受けられます。
企業側の負担
- 受け入れ準備: 安全教育、指導担当者の配置
- 時間的コスト: 週1回の受け入れ対応
- 報酬: 多くの場合、実習手当(日額2,000〜3,000円程度)を支払う
重要: デュアルシステムは「採用活動」ではなく「教育協力」が主目的です。あくまで生徒の成長をサポートする姿勢が求められます。
課題研究への協力で学校との信頼を構築
課題研究とは?
課題研究は、工業高校3年生が取り組む実践的な学習活動です。生徒が自ら研究テーマを設定し、グループで問題解決に取り組みます。
テーマ例:
- 製造工程の効率化
- 新製品の開発・試作
- 設備の改良・最適化
- IoT技術を活用した自動化システムの構築
- 環境に配慮した製造方法の研究
企業が協力できること
1. テーマ提供
企業が抱える実際の課題を、課題研究のテーマとして提供します。
例:
- 「製造ラインのロスタイム削減」
- 「不良品率を下げる検査方法の開発」
- 「省エネ設備への改良案」
実際の企業課題に取り組むことで、生徒は「社会で役立つ学び」を実感でき、モチベーションが向上します。
2. 技術指導・アドバイス
定期的に学校を訪問し、研究の進捗を確認しながら技術的なアドバイスを提供します。
頻度: 月1〜2回程度 内容:
- 現場の視点からのフィードバック
- 技術的な課題解決のヒント
- 業界の最新動向の共有
3. 設備・材料の提供
研究に必要な材料や設備を提供することで、より実践的な研究が可能になります。
例:
- 試作に必要な材料の提供
- 測定機器の貸し出し
- 工場見学や設備見学の受け入れ
4. 研究発表会への参加
多くの工業高校では、年度末に課題研究の発表会を開催します。企業担当者が審査員や講評者として参加することで、生徒へのフィードバックと学校との関係強化につながります。
課題研究協力のメリット
- 学校からの信頼獲得: 教育に真剣に協力する企業として高評価
- 生徒との接点: 優秀な生徒を早期に発見できる
- 自社の知名度向上: 生徒や先生に会社を知ってもらえる
- 採用につながる: 課題研究で協力した生徒が就職を希望するケースも多い
株式会社ゆめスタが運営するゆめアカでは、東海3県の工業高校40校とのネットワークを活かし、企業と学校をつなぐサポートを行っています。課題研究やデュアルシステムの導入をお考えの企業様は、ぜひご相談ください。
工業高校と連携する5つのステップ
ステップ1: 連携可能な工業高校を調査
まず、自社の近隣にある工業高校をリストアップします。
調査ポイント:
- 学校の学科構成(機械科、電気科、建築科など)
- デュアルシステムの実施有無
- 課題研究の取り組み内容
- 過去の就職実績
情報源:
- 学校の公式ウェブサイト
- 学校案内パンフレット
- 教育委員会への問い合わせ
ステップ2: 学校への初回訪問・提案
進路指導室を訪問し、デュアルシステムや課題研究への協力意向を伝えます。
訪問時に持参するもの:
- 会社案内パンフレット
- 工場・職場の写真や動画
- 協力可能な内容をまとめた資料
- 過去の高卒採用実績(あれば)
提案内容の例: 「弊社では、貴校の生徒さんの実践的な学びをサポートしたいと考えています。デュアルシステムの受け入れや、課題研究へのテーマ提供・技術指導が可能です。ぜひご検討いただけますでしょうか」
ステップ3: 受け入れ体制の整備
学校から承諾を得られたら、社内の受け入れ体制を整えます。
準備項目:
- 指導担当者の選定(技術力と指導力を兼ね備えた社員)
- 安全教育資料の作成
- 実習プログラムの設計
- 保険の確認(学校側の傷害保険で対応可能か確認)
ステップ4: 実習・研究の実施
デュアルシステムや課題研究を実際に開始します。
デュアルシステムの実施例:
- 週1回、生徒1〜2名を受け入れ
- 午前: 安全確認、作業手順の説明
- 午後: 実際の作業体験(簡単な加工、組立、検査など)
- 終了時: 振り返りとフィードバック
課題研究の実施例:
- 月1回、学校を訪問して進捗確認
- 必要に応じて工場見学や技術指導を実施
- 年度末の発表会に参加
ステップ5: 採用活動への展開
デュアルシステムや課題研究を通じて関係を築いた生徒に対し、採用活動を行います。
重要: 押しつけがましい勧誘は逆効果です。「興味があればぜひ応募してください」というスタンスを維持します。
採用につながりやすいタイミング:
- デュアルシステム実習の終了後
- 課題研究の発表会終了後
- 3年生の進路選択時期(6〜7月)
連携を通じた採用成功事例
ケース1: 金属加工業B社(従業員40名)
背景: 工業高校との接点がなく、高卒採用の実績ゼロ。求人票を出しても応募が来ない状態が3年続いていた。
取り組み:
-
1年目: 近隣の工業高校を訪問し、課題研究への協力を提案。機械科の生徒3名のグループに「切削加工の精度向上」をテーマ提供
-
月1回学校を訪問し、技術指導を実施
-
年度末の発表会に社長と工場長が参加し、講評
-
2年目: 前年度の協力が評価され、デュアルシステムの受け入れを依頼される。生徒2名を週1回受け入れ
-
そのうち1名が卒業後に入社を希望
結果: 2年間の継続的な協力により、1名の採用に成功。入社後の定着率も高く、現在3年目で中堅社員として活躍中。学校との信頼関係も強固になり、翌年以降も毎年1〜2名の採用が実現。
成功のポイント:
- 採用目的ではなく、純粋に教育協力する姿勢
- 社長自ら学校訪問し、熱意を伝えた
- 生徒の成長を第一に考えた指導
ケース2: 電気工事業C社(従業員25名)
背景: 電気科のある工業高校と連携したいが、どうアプローチすれば良いか分からなかった。
取り組み:
- 学校の課題研究発表会を見学に行き、先生とのコネクションを作る
- 翌年度から課題研究のテーマ提供と技術指導を開始
- 「省エネ照明の設計」をテーマに、実際の施工事例を紹介しながらサポート
結果: 課題研究に参加した生徒4名のうち2名が応募前職場見学に参加し、1名が入社。学校からは「実践的な指導をしてくれる企業」として高評価を得て、翌年度もデュアルシステムの受け入れを依頼された。
まとめ
重要ポイント
- デュアルシステムは学校と企業が一緒に生徒を育成する仕組み。長期間の接点で適性を見極められる
- 課題研究への協力は、学校との信頼関係構築に非常に効果的
- 工業高校との連携は「採用」よりも「教育協力」の姿勢が重要
- 連携を通じて優秀な技術系人材を安定的に採用できる
- ゆめアカは東海3県40校のネットワークで企業と学校をつなぐサポートを提供
次にすべきこと
- 近隣の工業高校を調査: 学科構成やデュアルシステムの実施状況を確認
- 学校への初回訪問: 協力可能な内容を提案
- 受け入れ体制を整備: 指導担当者の選定と安全教育の準備
- ゆめアカに相談: 工業高校との連携をスムーズに進めたい企業様は専門家のサポートを活用
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