「インターンシップ経由で高校生を採用したけど、育成コストが心配」「新卒社員の教育に使える助成金はないか」そんな悩みを抱えていませんか?
実際に、高卒新卒者の育成には、OJT担当者の人件費や研修費用など、多くのコストがかかります。しかし、国の助成金制度を活用することで、訓練経費や賃金の一部を補助してもらうことが可能です。
この記事では、「キャリア形成促進助成金」(現:人材開発支援助成金)の申請方法と、インターンシップ経由で採用した高卒新卒者の育成に活用する方法を詳しく解説します。
この記事で分かること
- キャリア形成促進助成金が人材開発支援助成金に名称変更された背景
- 高卒新卒者の育成に活用できる「若年人材育成訓練」の詳細
- OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練の実施方法
- 申請方法と必要書類
- 2025年度の拡充ポイント(賃上げ要件で助成額アップ)
読了時間: 約8分
目次
- キャリア形成促進助成金とは?名称変更の背景
- 人材開発支援助成金の6つのコース
- 高卒新卒者の育成に最適な「若年人材育成訓練」
- OJTとOFF-JTの組み合わせ訓練とは
- 申請方法と必要書類
- 助成額と受給要件
- 2025年度の拡充ポイント|賃上げ要件で助成額アップ
- まとめ
キャリア形成促進助成金とは?名称変更の背景
キャリア形成促進助成金から人材開発支援助成金へ
キャリア形成促進助成金は、2024年に人材開発支援助成金へと名称変更されました。制度の趣旨は変わらず、事業主が雇用する労働者に対して職業訓練等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
なぜ名称が変更されたのか
厚生労働省は、人材育成支援の幅を広げるため、複数の助成金制度を統合・再編しました。その結果、「人材開発支援助成金」として一本化され、現在は6つのコースに分かれています。
インターンシップとの関連性
人材開発支援助成金は、雇用する労働者への職業訓練が対象です。つまり、インターンシップ中の学生ではなく、インターンシップ経由で採用した正社員の育成に活用できます。
株式会社ゆめスタが運営するゆめアカでは、インターンシップ経由で採用した高卒新卒者の3年離職率が16.5%と、一般的な40.8%と比べて大幅に低いことが分かっています。インターンシップで企業を知った学生を採用後、助成金を活用してしっかり育成することで、定着率の向上が期待できます。
人材開発支援助成金の6つのコース
人材開発支援助成金には、以下の6つのコースがあります。
1. 人材育成支援コース
最も一般的なコースで、高卒新卒者の育成に最適です。10時間以上のOFF-JT、またはOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練に対して助成されます。
上限額: 1事業者1年度あたり1,000万円
2. 教育訓練休暇等付与コース
労働者に教育訓練休暇を付与した場合に助成されます。
助成額: 定額30万円(賃金要件・資格等手当要件を満たす場合は36万円)
3. 人への投資促進コース
デジタル人材育成や成長分野の訓練に対して助成されます。
上限額: 2,500万円まで(成長分野等人材訓練は1,000万円まで)
4. 事業展開等リスキリング支援コース
新規事業への進出や業態転換に伴う訓練に助成されます。
上限額: 1億円
5. 建設労働者認定訓練コース
建設業の認定訓練に対して助成されます。
上限額: 1,000万円
6. 建設労働者技能実習コース
建設業の技能実習に対して助成されます。
上限額: 500万円
高卒採用企業が活用すべきコース
中小企業が高卒新卒者を育成する場合、**「人材育成支援コース」が最も活用しやすいです。特に、35歳未満で雇用保険被保険者となってから5年以内の労働者を対象とした「若年人材育成訓練」**が該当します。
高卒新卒者の育成に最適な「若年人材育成訓練」
若年人材育成訓練とは
若年人材育成訓練は、人材育成支援コースの一つで、以下の条件を満たす労働者を対象とした訓練です。
対象労働者:
- 35歳未満
- 雇用保険被保険者となってから5年以内
つまり、高卒新卒者はすべて対象となります。
なぜ高卒新卒者の育成に最適なのか
高卒新卒者は、入社時点で専門的なスキルを持っていない場合が多く、OJTとOFF-JTを組み合わせた体系的な育成が必要です。若年人材育成訓練は、まさにこのニーズに応える制度です。
メリット:
- 訓練経費の一部が助成される
- 訓練期間中の賃金の一部が助成される
- OJTとOFF-JTの両方をカバー
- 体系的な育成計画を立てるきっかけになる
OJTとOFF-JTの組み合わせ訓練とは
OJTとOFF-JTの違い
OJT(On-the-Job Training):
- 実務を通じた訓練
- 先輩社員が指導
- 現場での実践的なスキル習得
OFF-JT(Off-the-Job Training):
- 実務を離れた訓練
- 座学や外部研修
- 理論や知識の習得
組み合わせ訓練の実施方法
人材開発支援助成金の「人材育成支援コース」では、10時間以上のOFF-JT、またはOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練が対象となります。
組み合わせ訓練の例:
| 期間 | 内容 | 形式 | 時間 |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 社内ルール・安全教育 | OFF-JT(座学) | 10時間 |
| 2-4週目 | 機械操作の実習 | OJT(現場) | 60時間 |
| 5週目 | 品質管理の基礎 | OFF-JT(座学) | 8時間 |
| 6-12週目 | 実務での技術習得 | OJT(現場) | 180時間 |
合計: OFF-JT 18時間 + OJT 240時間 = 258時間
このように、OFF-JTで基礎知識を学び、OJTで実践することで、効果的な育成が可能になります。
訓練計画の立て方
- 育成目標を明確にする(例: 3ヶ月で基本作業を習得)
- OFF-JTの内容を決める(例: 安全教育、品質管理)
- OJTの内容を決める(例: 機械操作、実務作業)
- 訓練スケジュールを作成
- 労働局に訓練計画を提出
申請方法と必要書類
申請の流れ
人材開発支援助成金の申請は、以下の流れで行います。
ステップ1: 訓練計画の作成
まず、訓練計画を作成します。訓練の目的、内容、期間、対象者、実施方法などを明確にします。
ステップ2: 都道府県労働局へ訓練計画を提出
訓練開始日の1ヶ月前までに、都道府県労働局(またはハローワーク)へ「職業訓練実施計画届」を提出します。
提出方法:
- 窓口提出
- 郵送
- 電子申請(雇用関係助成金ポータル)
ステップ3: 訓練の実施
計画に沿って訓練を実施します。訓練の記録(出席簿、訓練内容、指導者など)をしっかり残しておくことが重要です。
ステップ4: 支給申請
訓練終了後2ヶ月以内に、都道府県労働局へ支給申請書を提出します。
ステップ5: 審査・受給
労働局が審査を行い、問題がなければ助成金が支給されます。
必要書類
訓練計画提出時:
- 職業訓練実施計画届
- 訓練カリキュラム
- OJT実施計画(OJTを実施する場合)
- 事業所確認票
支給申請時:
- 支給申請書
- 訓練実施状況報告書
- 出席簿
- 訓練経費の領収書
- 賃金台帳・出勤簿
電子申請が便利
2023年4月から、雇用関係助成金ポータルで電子申請が可能になりました。窓口や郵送の手間が省けるため、積極的に活用しましょう。
助成額と受給要件
助成額
人材育成支援コースの助成額は、企業規模や訓練形式によって異なります。
経費助成
| 訓練形式 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| OFF-JT | 訓練経費の45% | 訓練経費の30% |
| OJT | - | - |
※ 賃金要件・資格等手当要件を満たす場合は、中小企業60%、大企業45%に引き上げ
賃金助成(OFF-JT実施時)
| 企業規模 | 1人1時間あたり |
|---|---|
| 中小企業 | 760円 |
| 大企業 | 380円 |
※ 賃金要件・資格等手当要件を満たす場合は、中小企業960円、大企業480円に引き上げ
OJT実施助成
| 企業規模 | 1人1時間あたり |
|---|---|
| 中小企業 | 20円 |
| 大企業 | - |
※ 賃金要件・資格等手当要件を満たす場合は、中小企業25円に引き上げ
受給要件
主な要件:
- 雇用保険の適用事業所であること
- 訓練計画を事前に提出していること
- 訓練実施期間中も雇用保険に加入していること
- 支給審査に協力すること
- 期間内に申請すること
2025年度の拡充ポイント|賃上げ要件で助成額アップ
2025年度の変更点
2025年度(令和7年度)から、賃上げ要件を満たす場合、助成額が引き上げられる制度が拡充されました。
適用条件:
- 訓練実施計画届の提出日が令和7年4月1日以降であること
賃上げ要件とは
以下のいずれかを満たす場合、助成額が引き上げられます。
賃金要件:
- 訓練受講後の賃金が、訓練実施前と比べて5%以上アップ
資格等手当要件:
- 訓練で取得した資格に対して資格等手当を支払い、賃金が3%以上アップ
具体例
例1: 賃金要件を満たす場合
- 訓練前の月給: 20万円
- 訓練後の月給: 21万円(5%アップ)
- → 助成額が中小企業の場合、OFF-JT経費助成が45%→60%にアップ
例2: 資格等手当要件を満たす場合
- 訓練前の月給: 20万円
- 訓練で取得した資格: 溶接技能者
- 資格手当: 6,000円/月(3%アップ)
- → 助成額が中小企業の場合、OFF-JT経費助成が45%→60%にアップ
賃上げと助成金を両立させるメリット
メリット1: 助成金が増える 助成額が45%→60%にアップするため、企業の実質負担が減ります。
メリット2: 社員のモチベーションが上がる 訓練を受けて成長すれば給料が上がることが明確になり、若手社員のやる気が向上します。
メリット3: 離職率が下がる 訓練と賃上げをセットで実施することで、「成長できる会社」「評価してくれる会社」という印象を与え、定着率が向上します。
ゆめアカでは、インターンシップ経由で採用した高卒新卒者に対して、体系的な育成計画と適切な評価制度を導入することで、3年離職率16.5%という低い数字を実現しています。助成金を活用しながら、賃上げと育成を両立させることが、長期的な定着につながります。
まとめ
重要ポイント
- キャリア形成促進助成金は「人材開発支援助成金」に名称変更
- 高卒新卒者の育成には「若年人材育成訓練」が最適(35歳未満、5年以内)
- OJTとOFF-JTの組み合わせ訓練で助成が受けられる
- 訓練開始1ヶ月前に訓練計画を提出し、訓練終了後2ヶ月以内に支給申請
- 2025年度は賃上げ要件を満たすと助成額がアップ(経費助成が45%→60%)
- 1事業者1年度あたり最大1,000万円まで助成
次にすべきこと
- 自社の育成計画を見直す(OJTとOFF-JTの組み合わせを検討)
- 訓練カリキュラムを作成する(安全教育、技術研修、品質管理など)
- 都道府県労働局に相談する(申請前に制度の詳細を確認)
- 訓練実施計画届を提出する(訓練開始1ヶ月前まで)
- 訓練実施後、賃上げを検討する(助成額アップ+定着率向上)
ゆめアカへのご相談はこちら
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東海3県40校とのネットワークを活かし、インターンシップの設計から実施、採用後の育成まで一貫してサポートします。2025年度には3社で14名の高卒採用を成功させており、中には3年間ゼロだった企業が4名採用に成功した事例もあります。
助成金の活用方法についてもアドバイスいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
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この記事は、株式会社ゆめスタが運営するゆめスタアカデミー(ゆめアカ)が提供しています。 高卒採用・インターンシップ支援の実績とノウハウをもとに、 中小企業の採用成功をサポートしています。




