「高卒新人に技術を教えているが、なかなか覚えてくれない」「教え方が分からず、結局ベテランが抱え込んでしまう」そんな悩みを抱えていませんか?
厚生労働省の調査によると、高卒新卒者の3年以内離職率は38.4%に達しています(令和3年3月卒業者)。技術が定着しないまま若手が辞めてしまい、技術継承が進まない企業が増えています。
しかし、効果的なOJT(On-the-Job Training)の進め方を理解し、段階的に技術を教えることで、若手の定着率と技術習得率を大幅に向上させることができます。
この記事では、製造業で実践できる高卒新人への技術指導の3ステップを、具体的に解説します。
この記事で分かること
- 高卒新人の技術教育が難しい3つの理由
- 効果的なOJTの3ステップ(基礎→実践→自律)
- 技術指導を成功させる環境づくりのポイント
読了時間: 約8分
目次
- なぜ高卒新人への技術指導は難しいのか
- 効果的なOJTの3つのステップ
- ステップ1:基礎スキルの習得
- ステップ2:実践的な技能の定着
- ステップ3:自律的な成長のサポート
- OJTを成功させる環境づくり
- よくある失敗パターンと対策
- まとめ
なぜ高卒新人への技術指導は難しいのか
高卒新人への技術指導が難しい理由は、主に3つあります。
理由1:実務経験がゼロからのスタート
高校卒業後すぐに入社する若手社員は、実務経験が全くありません。工場や現場の環境に慣れるだけでも時間がかかります。
大卒や中途採用者と違い、「仕事とは何か」という基本的な部分から教える必要があります。
理由2:教える側のスキル不足
製造業における人材育成の最大の課題は「指導する人材が不足している」で、62.4%の企業が課題として挙げています。
ベテラン職人は技術を持っていても、「教える技術」を持っているとは限りません。自分ができることと、人に教えることは全く別のスキルです。
理由3:教育計画が体系化されていない
多くの中小企業では、OJTが「先輩の背中を見て覚える」という属人的な方法に頼っています。
計画的な教育プログラムがないため、教える内容や順序が指導者によってバラバラになり、若手が混乱する原因になっています。
効果的なOJTの3つのステップ
高卒新人に技術を効果的に教えるには、以下の3ステップで段階的に進めることが重要です。
OJTの3ステップ
ステップ1:基礎スキルの習得(入社1〜3ヶ月)
- 安全教育と基本動作の徹底
- 「見せる→説明する→やらせる」の反復
ステップ2:実践的な技能の定着(入社4〜12ヶ月)
- 実務での反復練習とフィードバック
- 小さな成功体験を積み重ねる
ステップ3:自律的な成長のサポート(入社2年目以降)
- 目標設定と定期的な振り返り
- 後輩指導を通じた技術の定着
この3ステップを計画的に進めることで、若手の離職を防ぎながら、着実に技術を継承できます。
ステップ1:基礎スキルの習得(入社1〜3ヶ月)
安全教育を最優先する
技術指導の前に、必ず安全教育を徹底してください。
安全教育の内容:
- 機械の危険箇所と禁止事項
- 保護具の正しい着用方法
- 緊急時の対応手順
高卒新人は危険に対する感覚が未熟です。事故が起これば、本人だけでなく会社全体の信頼が損なわれます。
「見せる→説明する→やらせる」の基本サイクル
技術指導の基本は、以下の4ステップです。
技術指導の4ステップ:
- やって見せる:指導者が実際に作業を実演する
- 説明する:なぜその手順が必要なのか理由を伝える
- やらせてみる:新人に実際にやらせて確認する
- フィードバックする:良い点と改善点を具体的に伝える
このサイクルを繰り返すことで、技術が確実に定着します。
基本動作を徹底する
最初の3ヶ月は、以下の基本動作を徹底的に身につけさせます。
基本動作の例:
- 工具の正しい持ち方・使い方
- 測定器具の読み方
- 材料の扱い方と保管方法
- 報告・連絡・相談の習慣
基礎がしっかりしていないと、応用的な技術を教えても定着しません。
ステップ2:実践的な技能の定着(入社4〜12ヶ月)
反復練習とフィードバックの継続
基礎スキルが身についたら、実務での反復練習に移ります。
効果的な反復練習の方法:
- 同じ作業を繰り返し経験させる
- 毎日の作業後に5分間の振り返りを行う
- 「できたこと」を具体的に褒める
フィードバックは、叱るのではなく「具体的な改善方法を示す」ことが重要です。
小さな成功体験を積み重ねる
若手のモチベーションを維持するには、小さな成功体験を意図的に作ることが大切です。
成功体験の作り方:
- 少し難しいが達成可能な課題を与える
- 達成したら必ず褒める
- 成長を数字で見える化する(作業時間、不良率など)
株式会社ゆめスタが支援するインターンシップ経由の採用では、高校生時代に実務経験を積むことで、入社後の技術習得がスムーズになり、3年離職率が16.5%と一般的な38.4%の半分以下に抑えられています。
チェックリストで進捗を見える化する
技術習得の進捗を見える化するため、スキルチェックリストを活用します。
スキルチェックリストの例:
| スキル項目 | レベル1 | レベル2 | レベル3 | 習得日 |
|---|---|---|---|---|
| 旋盤作業 | 補助 | 単独作業可 | 指導可 | - |
| 溶接作業 | 補助 | 単独作業可 | 指導可 | - |
| 検査作業 | 補助 | 単独作業可 | 指導可 | - |
新人自身が自分の成長を実感できるため、モチベーション向上につながります。
ステップ3:自律的な成長のサポート(入社2年目以降)
目標設定と定期的な振り返り
2年目以降は、自分で考えて行動できる自律的な人材へと育てます。
目標設定のポイント:
- 月次・四半期・年間の目標を本人と一緒に設定する
- 目標は数値化する(作業時間、生産数、不良率など)
- 月1回の振り返り面談で進捗を確認する
目標を自分で設定することで、主体性が生まれます。
後輩指導を通じた技術の定着
3年目以降は、後輩の指導を任せることで、技術の定着を促します。
後輩指導のメリット:
- 人に教えることで自分の理解が深まる
- リーダーシップが育つ
- 先輩としての自覚が生まれる
教える経験を通じて、技術が完全に自分のものになります。
資格取得のサポート
若手のキャリアアップのため、資格取得を支援します。
製造業で役立つ資格の例:
- 技能検定(機械加工、溶接など)
- フォークリフト運転技能講習
- 危険物取扱者
- 電気工事士
資格は本人の自信にもつながり、会社への定着率も高まります。
OJTを成功させる環境づくり
OJT担当者を明確にする
「誰が教えるか」を明確にすることが重要です。
OJT担当者の選定基準:
- 技術レベルが高い
- コミュニケーション能力がある
- 若手の成長を応援できる人柄
複数人が教えると指導内容がバラバラになるため、メインの担当者を1名決めます。
質問しやすい雰囲気を作る
若手が質問しやすい環境を意図的に作ることが大切です。
質問しやすい雰囲気の作り方:
- 「分からないことは何でも聞いて」と最初に伝える
- 質問されたら笑顔で応える
- 「良い質問だね」と肯定的に反応する
質問できない環境では、ミスが隠され、重大な事故につながる可能性があります。
マニュアルを整備する
口頭だけの指導では限界があります。
マニュアル整備のメリット:
- 教える内容が標準化される
- 新人が自習できる
- 教育時間が短縮される
動画マニュアルを活用すれば、ベテランの技術を視覚的に伝えることができます。
よくある失敗パターンと対策
失敗パターン1:「見て覚えろ」式の放置
問題点:
- 何を覚えればいいか分からない
- 質問できずに不安が募る
- 早期離職につながる
対策: 計画的なOJTプログラムを作成し、「何を」「いつまでに」「どのレベルまで」教えるか明確にします。
失敗パターン2:教える内容が人によって違う
問題点:
- Aさんに教わったことと、Bさんに教わったことが違う
- 新人が混乱する
- 技術の標準化ができない
対策: 作業手順書とスキルチェックリストで、教える内容を統一します。
失敗パターン3:フィードバックがない
問題点:
- 自分の成長が実感できない
- モチベーションが下がる
- 改善点が分からない
対策: 毎日5分でも良いので、振り返りの時間を設けます。良い点を具体的に褒め、改善点を1つだけ伝えます。
まとめ
重要ポイント
高卒新人への効果的な技術指導は、以下の3ステップで進めます。
-
ステップ1:基礎スキルの習得(入社1〜3ヶ月)
- 安全教育と基本動作の徹底
- 「見せる→説明する→やらせる」の反復
-
ステップ2:実践的な技能の定着(入社4〜12ヶ月)
- 反復練習とフィードバック
- 小さな成功体験の積み重ね
-
ステップ3:自律的な成長のサポート(入社2年目以降)
- 目標設定と振り返り
- 後輩指導を通じた技術の定着
次にすべきこと
- 現在のOJT体制を見直す
- スキルチェックリストを作成する
- OJT担当者を明確にし、教育計画を立てる
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