「採用した高卒新人が、理由も言わずに突然辞めてしまった」「建前の退職理由はわかるが、本当の理由が知りたい」そんな経験はありませんか?
厚生労働省の調査によると、高卒新卒者の3年以内離職率は37.0%に達しており、約3人に1人が3年以内に会社を去っています。さらに、退職時に企業側に伝える理由と、若手社員が本音で語る理由には大きなギャップがあることが分かっています。
「一身上の都合」「家庭の事情」という建前の裏には、企業が見逃している深刻な問題が隠れているかもしれません。本当の退職理由を理解することで、離職を未然に防ぐことが可能です。
この記事では、各種調査データと退職者の本音をもとに、高卒新入社員が辞める本当の理由トップ5と、それぞれの具体的な対策を解説します。
この記事で分かること
- 高卒新入社員が辞める退職理由トップ5(本音ベース)
- 建前と本音のギャップがなぜ生まれるのか
- それぞれの理由に対する具体的な防止策
- 退職者の本音を引き出す面談のコツ
読了時間: 約7分
目次
退職理由の「建前」と「本音」の違い
なぜ若手社員は本音を言わないのか
退職時に企業に伝える理由(建前)と、実際の理由(本音)には大きな乖離があります。
よくある建前:
- 一身上の都合により
- 家庭の事情により
- キャリアアップのため
- 他にやりたいことが見つかった
しかし、これらの理由の多くは表面的なものであり、本当の退職理由を隠しているケースが少なくありません。
本音を言わない理由:
-
円満退社を希望している 退職後も良好な関係を保ちたいため、批判的な内容は避けたいと考えます。
-
報復や嫌がらせを恐れている 正直に話すことで、退職までの期間に嫌がらせを受けたり、退職金や有給消化を妨げられる不安があります。
-
退職を引き止められたくない 具体的な問題点を伝えると、「改善するから残ってほしい」と引き止められる可能性があるため、避けたいと考えます。
-
説明が面倒・気まずい 人間関係の問題などは説明しにくく、気まずさを避けるために当たり障りのない理由を述べます。
建前と本音のギャップがもたらす問題
建前だけを聞いていると、企業は本当の問題点を把握できず、同じ理由での離職が繰り返されます。「最近の若者は辞めやすい」と若手を責めるだけでは、根本的な解決になりません。
本音を理解し、組織の問題点を改善することが、離職率削減の第一歩です。
高卒新入社員が辞める本当の理由トップ5
各種調査データと退職者インタビューをもとに、高卒新入社員が辞める本当の理由を紹介します。
第1位:人間関係の問題(特に上司・先輩との関係)
退職理由として最も多いのが人間関係です。
リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、若手社員の早期離職理由の第1位は「人間関係」であり、特に上司や先輩との関係に悩むケースが多く見られます。
具体的な問題:
- 上司からのパワハラ・暴言
- 先輩からのいじめや無視
- 相談できる人がいない孤立感
- 理不尽な叱責や指導
- 世代間のコミュニケーションギャップ
本音の声:
- 「上司が怒鳴るので、毎日会社に行くのが怖い」
- 「質問すると『そんなこともわからないのか』と言われる」
- 「先輩が冷たく、職場に居場所がない」
- 「ミスをしたとき、人格否定のような叱り方をされた」
企業側が気づきにくい理由:
経営者や管理職は「自分たちの時代はもっと厳しかった」「これくらいの指導は当たり前」と考えがちですが、18歳で社会に出る高卒新人にとっては、大きなストレスになっています。
また、パワハラを受けている本人が「自分が弱いから」と自責的に考え、周囲に相談しないケースも多く、企業が問題に気づいた時には既に退職を決意している場合もあります。
第2位:長時間労働・ワークライフバランスの悪さ
労働時間や休日に関する不満も、退職理由の上位に入ります。
具体的な問題:
- 恒常的な残業(月40時間以上)
- サービス残業の常態化
- 休日出勤が頻繁にある
- 有給休暇が取れない
- 求人票と実際の労働時間が異なる
本音の声:
- 「求人票には『残業月10時間程度』と書いてあったが、実際は50時間以上」
- 「サービス残業が当たり前で、給与に反映されない」
- 「有給を申請すると嫌な顔をされ、取りづらい」
- 「休日も仕事の連絡が来て、休めた気がしない」
背景:
高校生は学校生活で「定時に終わる」「土日は休み」という生活リズムに慣れています。入社後に突然、長時間労働や休日出勤が常態化している環境に置かれると、心身ともに疲弊し、離職を考えるようになります。
特に、求人票と実態のギャップは深刻な問題です。採用時に正確な情報を伝えていないと、「騙された」という不信感が生まれ、早期離職につながります。
第3位:仕事にやりがいを感じられない
Z世代を含む若手社員は、仕事にやりがいや意味を求める傾向が強いです。
OpenWorkの調査によると、3年以内に辞めたZ世代の退職理由の上位に「やりがいがない」が入っています。
具体的な問題:
- 単調な作業の繰り返しで成長実感がない
- 自分の仕事が会社や社会にどう貢献しているか分からない
- 上司や先輩から評価やフィードバックがない
- 裁量がなく、言われたことだけをやる仕事
本音の声:
- 「毎日同じ作業の繰り返しで、何のために働いているか分からない」
- 「自分がやってもやらなくても変わらない仕事をしている」
- 「頑張っても評価されず、モチベーションが下がった」
- 「先輩のように10年後も同じ仕事をしているのが嫌だ」
企業側の誤解:
経営者や管理職は「若手には簡単な仕事から始めさせるのが当たり前」と考えがちですが、若手社員は「なぜこの仕事が必要なのか」「これを続けるとどうなるのか」を理解したいと考えています。
仕事の意味を伝え、成長実感を与えることが重要です。
第4位:仕事のミスマッチ(聞いていた仕事と違う)
入社前に聞いていた仕事内容と、実際の業務にギャップがあるケースです。
具体的な問題:
- 「事務職」と聞いていたのに、営業をさせられる
- 「製造」と聞いていたのに、倉庫作業ばかり
- 「転勤なし」と聞いていたのに、県外転勤を命じられる
- 「やりたい仕事ができる」と言われたが、雑用ばかり
本音の声:
- 「事務職として採用されたのに、営業ノルマを課された」
- 「機械加工を学べると聞いていたのに、ずっと清掃と運搬作業」
- 「3年は転勤なしと言われたのに、半年で異動を命じられた」
原因:
高卒採用では、一者二社制により限られた情報で企業を選ぶため、入社前に十分な情報が得られないことがあります。また、企業側も「良い人材を採用したい」という思いから、実態よりも良く見せてしまう傾向があります。
株式会社ゆめスタのゆめアカでは、インターンシップを通じて高校生に実際の仕事を体験してもらうことで、ミスマッチを大幅に減らしています。その結果、インターンシップ経由で採用した若手社員の3年離職率は16.5%と、一般的な37.0%の半分以下に抑えられています。
第5位:給与が低い・昇給が見込めない
給与や待遇への不満も、退職理由として無視できません。
具体的な問題:
- 初任給が低い
- 昇給額が少なく、将来が不安
- 同世代の友人と比べて給与が低い
- 賞与がない・少ない
- 頑張っても給与に反映されない
本音の声:
- 「大卒の友人より月5万円も給料が安く、将来が不安」
- 「3年働いても給与が5,000円しか上がらず、辞めることにした」
- 「賞与が年1ヶ月分しかなく、生活が苦しい」
- 「残業代が出ず、実質的な時給が低すぎる」
背景:
高卒初任給は大卒より低いのが一般的ですが、それでも生活できる水準の給与と、将来的な昇給の見込みを示すことが重要です。
特に、同級生が大卒で就職した後、給与差を実感すると「自分の選択は間違っていたのでは」と不安になり、離職を考えるケースがあります。
本音を引き出す退職面談の方法
退職理由の本音を知ることで、次の離職を防ぐヒントが得られます。
退職面談のベストプラクティス
1. 直属の上司ではなく、人事や経営者が行う
直属の上司が原因で辞める場合、本人の前では本音を言いにくいためです。
2. 安心して話せる環境を作る
「退職が決まっているので、何を言っても構いません。今後の改善のために、率直な意見を聞かせてください」と伝えます。
3. 本音を引き出す質問
- 「入社前と入社後で、一番ギャップを感じたことは何ですか?」
- 「会社や上司に改善してほしかったことはありますか?」
- 「どんな制度や環境があれば、続けられたと思いますか?」
- 「後輩に同じ思いをさせないために、何を変えるべきだと思いますか?」
4. 匿名アンケートの活用
面談で話しにくい場合、退職後に匿名アンケートを送付する方法もあります。
退職理由の記録と分析
退職理由を記録し、共通する問題点を分析することで、組織の課題が見えてきます。
分析の視点:
- 退職者の共通点(配属部署、入社年次、上司など)
- 退職理由の傾向(人間関係、労働時間など)
- 改善可能な要因とそうでない要因の切り分け
離職を防ぐための5つの対策
本音の退職理由を踏まえて、具体的な対策を実施しましょう。
対策①:人間関係の改善
メンター制度の導入
新入社員1人に対して、年齢の近い先輩社員をメンターとして配置し、相談しやすい環境を作ります。
管理職向けのパワハラ研修
「厳しい指導」と「パワハラ」の違いを理解し、適切なコミュニケーション方法を学びます。
定期的な1on1面談
月1回、上司と部下が1対1で話す時間を設け、小さな悩みを早期にキャッチします。
対策②:労働時間の適正化
残業時間の可視化
各部署・個人の残業時間を月次で集計し、問題があれば改善します。
有給取得の促進
有給取得率を管理し、上司から積極的に取得を促します。
求人票の正確な記載
実態と異なる情報を載せず、正確な労働時間を記載します。
対策③:やりがいの創出
仕事の意味を伝える
単純作業でも「なぜこれが必要か」「どう会社に貢献しているか」を説明します。
小さな成功体験を積ませる
段階的に難しい仕事を任せ、成長実感を与えます。
定期的なフィードバック
良い点を褒め、改善点を具体的に伝え、成長をサポートします。
対策④:ミスマッチの防止
インターンシップの導入
入社前に実際の仕事を体験してもらい、ミスマッチを防ぎます。
職場見学の充実
見学時に実際の業務を詳しく説明し、質問の時間を十分に取ります。
求人票と実態の一致
仕事内容、労働時間、給与などを正確に記載します。
対策⑤:給与・待遇の見直し
昇給制度の明確化
どのように評価され、いくら昇給するかを明確に示します。
資格取得支援
資格を取得すれば手当が出る制度を整備します。
市場水準の確認
同業他社の給与水準を調査し、著しく低い場合は改善を検討します。
まとめ
重要ポイント
- 高卒新入社員の退職理由には「建前」と「本音」の大きなギャップがある
- 本音の退職理由トップ5は「人間関係」「長時間労働」「やりがいがない」「ミスマッチ」「給与が低い」
- 退職面談で本音を引き出し、組織の問題点を把握することが重要
- インターンシップ導入など、採用段階でのミスマッチ防止が効果的
次にすべきこと
-
過去3年間の退職者の理由を再分析する 建前ではなく、本音の理由を推測し、共通点を見つけます。
-
退職面談の方法を見直す 本音を引き出せる質問や環境を整備します。
-
優先順位をつけて改善を実施する 人間関係、労働時間、ミスマッチなど、自社で最も問題になっている点から改善します。
-
インターンシップの導入を検討する 採用段階でのミスマッチを防ぐため、インターンシップを検討してください。
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