「デュアルシステムに興味はあるけど、費用がどれくらいかかるのか心配」「企業の負担が大きいのではないか」そんな不安を抱えていませんか?
実際に、デュアルシステムは1年間にわたる長期実習であり、通常のインターンシップとは異なるコストが発生します。しかし、自治体の支援制度や補助金を活用することで、実質負担額を大幅に抑えることができます。
この記事では、デュアルシステムの受け入れ費用、利用できる補助金、実質負担額の計算方法を詳しく解説します。
この記事で分かること
- デュアルシステムで企業が負担する費用の内訳
- 利用できる補助金・助成金の種類
- 自治体別の支援制度
- 実質負担額のシミュレーション
- 費用を抑えるための具体的な方法
読了時間: 約8分
目次
デュアルシステムの費用内訳
デュアルシステムで企業が負担する費用について、詳しく解説します。
企業が負担する主な費用
デュアルシステムの受け入れには、以下の費用が発生します。
1. 指導員の人件費
内容:
- 実習指導員の時間コスト
- 指導責任者の管理時間コスト
目安:
- 指導員1名あたり:週1日(8時間)× 40週 = 320時間/年
- 時給3,000円の場合:96万円/年・生徒1人あたり
2. 消耗品・資材費
内容:
- 実習で使用する資材・部品
- 工具・測定器具の消耗
- 安全保護具(ヘルメット、保護メガネなど)
目安:
- 5〜10万円/年・生徒1人あたり
注意: 学校によっては、作業服、帽子、安全靴などを学校側が負担する場合もあります。
3. 保険料
内容:
- 実習中の事故に備えた保険(基本的に学校側が加入)
- 企業側の労災保険の確認
目安:
- 学校側の学生総合保険で対応される場合が多い
- 企業側の追加負担は基本的になし
4. 光熱費・施設使用費
内容:
- 電気・水道などの光熱費
- 実習スペースの使用コスト
目安:
- 微々たる金額(通常の業務に含まれる範囲)
5. 事務費用
内容:
- 実習日誌の管理
- 学校への報告書作成
- 三者協定の手続き
目安:
- 年間2〜3万円程度
給与は支払う必要があるか?
結論: デュアルシステムは教育プログラムの一環であり、給与の支払いは不要です。
理由:
- 学校の正式な授業として単位認定される
- 生徒は「実習生」であり「労働者」ではない
- 学校側が教育の一環として実施
任意で支給できるもの:
- 交通費(実費または定額)
- 昼食代
- 実習奨励金(月5,000〜10,000円程度)
多くの企業は、交通費や昼食代を支給していますが、法的な義務ではありません。
年間の総コスト目安
デュアルシステムで生徒1人を受け入れる場合の年間コストは、以下の通りです。
| 費用項目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 指導員の人件費 | 80〜100万円 |
| 消耗品・資材費 | 5〜10万円 |
| 事務費用 | 2〜3万円 |
| 交通費(任意) | 5〜10万円 |
| 昼食代(任意) | 5〜8万円 |
| 合計 | 97〜131万円/年 |
重要: この金額の大部分は指導員の人件費であり、実際の現金支出は10〜20万円程度です。
利用できる補助金・助成金
デュアルシステムの実施で利用できる補助金・助成金を紹介します。
1. 地方自治体の支援制度
東京都中小企業振興公社の支援
東京都では、工業高校等からの生徒受け入れ企業に対して支援を行っています。
支援内容:
- 1人1日8,000円を支給
- 最大20日間まで対象
- 上限:16万円/生徒1人
対象企業:
- 東京都内の中小企業
- 工業高校・高専からの生徒を受け入れ
申請方法:
- 東京都中小企業振興公社のウェブサイトから申請
- 実習開始前に事前登録が必要
出典: 東京都中小企業振興公社「インターンシップ受入支援」
その他の自治体支援
各都道府県・市町村で独自の支援制度を設けている場合があります。
確認先:
- 都道府県の商工労働部
- 市町村の産業振興課
- 地域の商工会議所
2. 人材開発支援助成金(特定訓練コース)
厚生労働省の助成金制度で、社員教育に活用できます。
対象:
- デュアルシステムで受け入れた生徒を卒業後に正社員として採用した場合
- 入社後のOJT・Off-JTに対して助成
助成額:
- Off-JT:賃金助成 760円/時間(中小企業)
- OJT:実施助成 665円/時間(中小企業)
注意: デュアルシステムの実習期間中は対象外。卒業後の採用・育成が対象。
出典: 厚生労働省「人材開発支援助成金」
3. 若者雇用促進総合サイトの支援
ユースエール認定企業など、若者の採用・育成に積極的な企業には様々な支援があります。
メリット:
- 助成金の加算措置
- 公共調達での優遇
- ハローワークでの重点PR
4. 厚生労働省版デュアルシステム(参考)
注意: これは高卒後のニート・フリーター向けのデュアルシステムで、高校生対象とは別制度です。
企業への助成:
- 月24,000円/訓練生1人
対象者:
- 高卒後の15〜24歳のニート・フリーター
- ハローワークを通じた訓練
違い:
- 文部科学省版(高校生):企業への直接的な補助金なし
- 厚生労働省版(高卒後):企業に月24,000円支給
出典: 文部科学省「専門高校等における『日本版デュアルシステム』推進事業」評価報告書
自治体別の支援制度
デュアルシステムの支援制度は、自治体によって異なります。
東京都
東京都中小企業振興公社
- 1人1日8,000円(最大20日間)
- 上限16万円/生徒1人
- 工業高校・高専対象
問い合わせ先: 東京都中小企業振興公社 総合支援部
愛知県・岐阜県・三重県(東海3県)
東海3県では、各県の商工会議所や産業振興機関が独自の支援を行っている場合があります。
確認先:
- 愛知県産業労働部
- 岐阜県商工労働部
- 三重県雇用経済部
- 各地域の商工会議所
株式会社ゆめスタが運営するゆめアカでは、東海3県の自治体支援制度の情報提供も行っています。
長野県
須坂創成高校のデュアルシステムでは、須坂市や長野県の支援を受けています。
特徴:
- 学校、企業、地域、行政が協働
- 地域産業を担う人材育成を目指す
大阪府・兵庫県
関西圏でも、一部の自治体で支援制度が設けられています。
確認先:
- 大阪府商工労働部
- 兵庫県産業労働部
支援制度がない地域の場合
自治体の支援制度がない場合でも、以下の方法でコストを抑えられます。
-
学校と費用分担を相談する
- 作業服、安全靴などを学校側が負担
-
商工会議所に相談する
- 地域の産業団体が企業負担を軽減する仕組みを持つ場合がある
-
複数企業で連携する
- 地域の企業が共同で生徒を受け入れる
実質負担額のシミュレーション
具体的なケースで、実質負担額をシミュレーションします。
ケース1: 東京都の中小企業(支援制度あり)
生徒1人を受け入れた場合(年間40日実習)
| 費用項目 | 金額 |
|---|---|
| 消耗品・資材費 | 8万円 |
| 事務費用 | 3万円 |
| 交通費(任意) | 8万円 |
| 昼食代(任意) | 6万円 |
| 小計 | 25万円 |
補助金:
- 東京都中小企業振興公社:16万円(20日分)
実質負担額:
- 25万円 - 16万円 = 9万円/年
月額換算: 約7,500円/月
ケース2: 東海3県の中小企業(支援制度なし)
生徒1人を受け入れた場合(年間40日実習)
| 費用項目 | 金額 |
|---|---|
| 消耗品・資材費 | 8万円 |
| 事務費用 | 3万円 |
| 交通費(任意) | 6万円 |
| 昼食代(任意) | 5万円 |
| 合計 | 22万円 |
実質負担額: 22万円/年
月額換算: 約18,000円/月
ケース3: 学校が費用を多く負担する場合
一部の学校では、作業服、安全靴、交通費を学校側が負担します。
生徒1人を受け入れた場合(年間40日実習)
| 費用項目 | 金額 |
|---|---|
| 消耗品・資材費 | 5万円 |
| 事務費用 | 2万円 |
| 昼食代(任意) | 5万円 |
| 合計 | 12万円 |
実質負担額: 12万円/年
月額換算: 約10,000円/月
コストパフォーマンスの考え方
デュアルシステムは、単なるコストではなく投資です。
リターン:
-
採用コストの削減
- 通常の採用費用:30〜50万円
- デュアルシステム経由:実質0円
-
早期離職の防止
- 通常の3年離職率:40%
- デュアルシステム経由:16.5%
-
即戦力の育成
- 入社後すぐに戦力化
- OJT期間の短縮
計算例:
- デュアルシステムの費用:20万円/年
- 通常の採用費用:40万円
- 早期離職による損失:200万円(1人あたり)
早期離職率が40%→16.5%に改善すれば、10人採用で約500万円のコスト削減になります。
費用を抑える5つの方法
デュアルシステムの費用を抑えるための具体的な方法を紹介します。
方法1: 自治体の支援制度を活用する
手順:
- 都道府県・市町村の商工労働部に問い合わせ
- 商工会議所・産業振興機関に相談
- 利用可能な支援制度を確認
- 事前登録・申請を行う
ポイント:
- 実習開始前に必ず申請する
- 締め切りや募集期間を確認する
方法2: 学校と費用分担を相談する
相談すべき内容:
- 作業服、安全靴、ヘルメットなどの支給
- 実習で使用する資材の一部負担
- 交通費の補助
注意: 学校の予算にも限りがあるため、相互に負担を分け合う姿勢が大切です。
方法3: 既存の設備・資材を活用する
工夫例:
- 実習専用の新しい設備を購入しない
- 通常業務で使用している設備を共用
- 端材や余剰資材を実習用に活用
- 先輩社員の使い古した保護具を再利用
方法4: 複数の生徒を受け入れる
メリット:
- 指導員の時間を効率化
- 資材のまとめ買いでコスト削減
- 生徒同士で切磋琢磨できる環境
目安:
- 2〜3人をまとめて受け入れると効率が良い
方法5: ゆめアカなどの支援サービスを活用する
株式会社ゆめスタが運営するゆめアカでは、デュアルシステムの導入から運営までをサポートしています。
サポート内容:
- 自治体の支援制度の情報提供
- 実習プログラムの設計支援
- 学校との橋渡し
- 費用を抑えるノウハウの提供
東海3県40校とのネットワークを活かし、貴社に最適なデュアルシステムの実施をサポートします。
よくある質問
デュアルシステムの費用に関するよくある質問にお答えします。
Q1. 給与は支払わなければいけませんか?
A. いいえ、デュアルシステムは教育プログラムの一環であり、給与の支払いは不要です。ただし、任意で交通費や昼食代、実習奨励金を支給する企業もあります。
Q2. 事故が起きた場合の医療費は誰が負担しますか?
A. 基本的に学校側が加入している学生総合保険でカバーされます。企業側の追加負担は原則ありません。ただし、企業側の安全管理責任は問われるため、十分な安全対策が必要です。
Q3. 補助金の申請は複雑ですか?
A. 自治体によって異なりますが、東京都中小企業振興公社の場合は比較的シンプルです。実習開始前に事前登録し、実習後に報告書を提出する流れが一般的です。
Q4. 費用対効果は本当にあるのですか?
A. はい、あります。デュアルシステム経由で採用した場合、早期離職率が大幅に低下し(40%→16.5%)、採用コストも削減できます。また、入社後すぐに戦力化できるため、OJT期間も短縮されます。
Q5. 小規模企業でも費用負担は可能ですか?
A. はい、可能です。実際の現金支出は年間10〜20万円程度であり、月額換算で1〜2万円程度です。また、自治体の支援制度や学校との費用分担を活用すれば、さらに負担を軽減できます。
まとめ
重要ポイント
- デュアルシステムの年間コストは97〜131万円(生徒1人)だが、大部分は指導員の人件費であり、実際の現金支出は10〜20万円程度
- 給与の支払いは不要。交通費や昼食代は任意
- 東京都では1人1日8,000円(最大16万円)の支援制度があり、実質負担額を大幅に削減可能
- 学校と費用分担を相談することで、作業服や安全靴などの費用を軽減できる
- 費用対効果は高い。早期離職率が40%→16.5%に改善し、採用コストも削減
次にすべきこと
-
自治体の支援制度を確認する
- 都道府県・市町村の商工労働部に問い合わせ
- 商工会議所に相談
-
学校と費用について相談する
- 実習に必要な物品の負担分担を確認
- 交通費の補助の有無を確認
-
費用のシミュレーションを行う
- 自社の場合の年間コストを計算
- 補助金を含めた実質負担額を把握
-
支援サービスに相談する
- ゆめアカなど、デュアルシステムの導入支援サービスに相談
- 費用を抑えるノウハウを学ぶ
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