デュアルシステムの三者協定とは?企業・学校・保護者の役割
「デュアルシステムを導入したいけど、三者協定って何を決めればいいの?」「学校や保護者とどんな契約を結べばいい?」そんな疑問を持っていませんか?
デュアルシステムでは、企業・学校・保護者の三者が協定書を締結することが必須です。この三者協定により、責任範囲が明確になり、安全で効果的な職業教育を実現できます。
しかし、協定書の内容を誤ると、トラブル発生時に大きな問題に発展する可能性があります。
この記事では、三者協定の内容、各者の役割、締結の流れを詳しく解説します。
この記事で分かること
- 三者協定とは何か、なぜ必要か
- 協定書に含めるべき8つの項目
- 企業・学校・保護者それぞれの役割
- 締結の流れと注意点
読了時間: 約5分
目次
三者協定とは?
三者協定とは、デュアルシステムの実施に関する取り決めを文書化し、企業・学校・保護者の三者が署名・押印する契約書のことです。
三者協定の正式名称
- 「企業実習に関する三者協定書」
- 「デュアルシステム実施に関する覚書」
- 「職業実習協定書」
学校や地域によって名称は異なりますが、内容は共通しています。
三者協定の法的位置づけ
三者協定は、以下の法的根拠に基づいています。
- 労働基準法: 労働者ではない実習生の位置づけ
- 学校教育法: 学校教育の一環としての実習
- 個人情報保護法: 生徒の個人情報の取り扱い
三者協定を締結することで、デュアルシステムが「学校教育の一環」として位置づけられ、労働法規の適用が免除されます(ただし、安全配慮義務は依然として企業にあります)。
三者協定が必要な理由
デュアルシステムで三者協定が必須とされるのは、以下の理由からです。
1. 責任範囲の明確化
デュアルシステム中に事故やトラブルが発生した場合、誰が責任を負うのかを明確にします。
例:実習中の怪我
- 企業の過失による怪我 → 企業が損害賠償責任
- 生徒の重大な過失 → 生徒・保護者が責任
- 不可抗力(自然災害など) → 各自が責任を負わない
2. 保護者の理解と同意
保護者が実習内容・期間・リスクを理解し、同意することで、安心して子どもを送り出せます。
3. 学校の単位認定
学校が企業実習を単位として認定するための根拠となります。
4. 企業の信頼性向上
三者協定を丁寧に締結することで、学校・保護者からの信頼を得られ、今後の採用活動にもプラスに働きます。
協定書に含めるべき8つの項目
三者協定書には、以下の8つの項目を必ず含める必要があります。
1. 目的
デュアルシステムの目的を明記します。
記載例:
本協定は、生徒の職業能力の向上、キャリア形成、実践的な技術習得を目的とし、企業・学校・保護者が協力して実習を実施するために必要な事項を定める。
2. 実習内容
具体的な作業内容、習得すべき技能を記載します。
記載例:
【実習内容】
・機械加工の基礎(旋盤、フライス盤の操作)
・図面の読み方、測定技術
・安全装備の着用、安全確認の手順
・報告・連絡・相談の実践
3. 実習期間・時間
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実習期間 | 令和〇年5月〜令和〇年2月(10ヶ月間) |
| 実習日 | 毎週水曜日 |
| 実習時間 | 9:00〜17:00(休憩1時間を含む) |
| 総実習時間 | 約150時間 |
4. 単位認定
学校が実習を単位として認定するかどうかを明記します。
記載例:
学校は、企業実習を「課題研究」の単位として認定し、成績評価に反映する。評価は、企業からの実習報告書、生徒の実習日誌、担当教員の観察に基づき行う。
5. 費用負担
誰がどの費用を負担するかを明記します。
| 費目 | 負担者 |
|---|---|
| 交通費 | 生徒・保護者 |
| 昼食代 | 生徒・保護者 |
| 傷害保険 | 学校(学校が一括加入) |
| 損害賠償保険 | 学校または企業 |
| 実習用具 | 企業(作業着、安全靴など) |
6. 損害賠償責任
事故やトラブル発生時の責任範囲を明記します。
記載例:
【企業の責任】
企業の過失により生徒が怪我をした場合、企業は損害賠償責任を負う。
【生徒・保護者の責任】
生徒の故意または重過失により企業の設備・製品に損害を与えた場合、生徒・保護者は損害賠償責任を負う。ただし、通常の実習中の軽微な損害については、企業が負担する。
【保険】
生徒の怪我については学校が加入する傷害保険を適用する。企業の設備損害については企業が加入する損害賠償保険を適用する。
7. 守秘義務
生徒が企業の機密情報を漏らさないことを約束します。
記載例:
生徒は、実習中に知り得た企業の技術情報、顧客情報、その他の機密情報を第三者に漏らさないこととする。この守秘義務は、実習終了後も継続する。
8. 中止条件
どのような場合に実習を中止するかを明記します。
記載例:
【実習の中止】
以下の場合、三者協議の上、実習を中止することができる。
・生徒の健康上の理由
・生徒の著しい勤怠不良または素行不良
・企業の経営上の理由
・その他、実習の継続が困難と認められる理由
企業の役割と責任
三者協定における企業の主な役割と責任は以下の通りです。
企業の役割
-
実習場所・設備の提供
- 安全な作業環境の整備
- 必要な工具・機械の提供
-
OJT担当者の配置
- 専任の指導担当者を配置
- 技術指導、安全教育の実施
-
実習内容の設計
- 段階的なカリキュラムの作成
- 生徒の成長に合わせた調整
-
評価・報告
- 実習終了後の評価書作成
- 学校への定期報告
企業の責任
- 安全配慮義務: 生徒が怪我をしないよう、安全対策を講じる
- 損害賠償責任: 企業の過失による怪我・事故の賠償
- 守秘義務: 生徒の個人情報を適切に管理
学校の役割と責任
三者協定における学校の主な役割と責任は以下の通りです。
学校の役割
-
企業とのマッチング
- 生徒の希望・適性に合った企業の紹介
- 企業見学、面談の調整
-
事前・事後指導
- 実習前の安全教育、マナー教育
- 実習後の振り返り、成果発表
-
定期的な巡回指導
- 月1回程度、教員が企業を訪問
- 生徒の様子を確認、企業担当者と面談
-
単位認定と評価
- 実習内容を単位として認定
- 企業の評価書を基に成績評価
学校の責任
- 生徒の選考責任: 適切な生徒を選考し、企業に紹介
- 保険加入: 生徒の傷害保険、損害賠償保険に加入
- 緊急時の対応: 事故発生時、保護者への連絡と対応
保護者の役割と責任
三者協定における保護者の主な役割と責任は以下の通りです。
保護者の役割
-
実習への同意
- 実習内容、期間、リスクを理解し、同意
- 協定書に署名・押印
-
生徒のサポート
- 実習へのモチベーション維持
- 健康管理、生活リズムの維持
-
企業・学校との連携
- 定期的に学校から報告を受ける
- 問題があれば速やかに相談
保護者の責任
- 費用負担: 交通費、昼食代などの負担
- 緊急時の対応: 生徒の怪我・病気の際、速やかに対応
- 損害賠償責任: 生徒の故意・重過失による損害の賠償
三者協定の締結の流れ
三者協定の締結は、以下の流れで進めます。
ステップ1: 企業と学校の事前調整(1〜2ヶ月前)
-
実習内容の協議
- 企業と学校で実習内容を決定
- カリキュラム、期間、時間を調整
-
協定書の作成
- 学校が協定書のひな形を用意(通常は学校側が作成)
- 企業と内容を確認・調整
ステップ2: 保護者への説明(1ヶ月前)
-
保護者説明会
- 学校が保護者向け説明会を開催
- 実習の目的、内容、リスクを説明
-
企業見学
- 保護者が企業を訪問(任意)
- 職場環境を確認し、安心感を持つ
ステップ3: 三者協定の締結(実習開始2週間前)
-
協定書の最終確認
- 企業・学校・保護者で内容を最終確認
- 不明点があれば質問・修正
-
署名・押印
- 三者がそれぞれ署名・押印
- 各者が1部ずつ保管(計3部作成)
ステップ4: 実習開始
- 実習初日のオリエンテーション
- 企業が安全教育、職場ルールを説明
- OJT担当者の紹介
協定書作成の注意点
三者協定書を作成する際は、以下の点に注意してください。
1. 曖昧な表現を避ける
NG例: 「企業は適切に指導する」 OK例: 「企業は専任のOJT担当者を配置し、週1回、進捗を確認する」
2. 損害賠償の範囲を明確に
重要: 「通常の実習中の軽微な損害は企業が負担」と明記し、保護者の不安を軽減します。
3. 保険の適用範囲を確認
- 傷害保険: 生徒の怪我を補償
- 損害賠償保険: 企業の設備損害を補償
- 個人賠償責任保険: 生徒が第三者に損害を与えた場合
実際に、株式会社ゆめスタのゆめアカでは、デュアルシステム導入企業向けに、三者協定書のひな形提供や締結サポートを行っています。
4. 中止条件を具体的に
NG例: 「実習の継続が困難な場合」 OK例: 「生徒が連続3回欠席した場合、または著しい素行不良があった場合」
よくあるトラブルと対策
三者協定に関連して、以下のようなトラブルが発生することがあります。
トラブル1: 実習中の怪我
事例: 生徒が機械操作中に指を怪我
原因:
- 安全教育の不足
- 安全装備の未着用
対策:
- 実習初日に必ず安全教育を実施
- 安全装備の着用を徹底
- 危険な作業は必ずOJT担当者が立ち会う
協定書の記載:
企業は、実習初日に安全教育を実施し、安全装備の着用を徹底する。生徒が安全装備を着用しない場合、実習を中止する。
トラブル2: 生徒による設備の損害
事例: 生徒が誤って高額な測定器を落として破損
原因:
- 作業の難易度が高すぎた
- 監督不足
対策:
- 段階的に作業難易度を上げる
- 高額な設備は必ずOJT担当者が立ち会う
- 「通常の実習中の損害は企業負担」と明記
協定書の記載:
通常の実習中に発生した軽微な損害(10万円以下)は企業が負担する。生徒の故意または重過失により発生した損害については、保護者に賠償を求める場合がある。
トラブル3: 保護者の同意が得られない
原因:
- 実習内容が不明確
- 安全対策への不安
対策:
- 保護者説明会で詳しく説明
- 企業見学の機会を提供
- 過去の実習実績を紹介
まとめ
デュアルシステムの三者協定は、企業・学校・保護者が安心して実習を進めるために不可欠です。
三者協定の重要ポイント
- 協定書に含めるべき8項目: 目的、実習内容、期間、単位認定、費用負担、損害賠償、守秘義務、中止条件
- 企業の役割: 安全な実習環境の提供、OJT担当者の配置、評価・報告
- 学校の役割: マッチング、事前・事後指導、巡回指導、単位認定
- 保護者の役割: 実習への同意、生徒のサポート、費用負担
三者協定締結の4ステップ
- 企業と学校の事前調整: 実習内容の決定、協定書作成
- 保護者への説明: 説明会、企業見学
- 三者協定の締結: 署名・押印、各者が1部保管
- 実習開始: オリエンテーション、安全教育
成功のための3つのポイント
- 曖昧な表現を避ける: 責任範囲を明確に記載
- 保険の適用範囲を確認: 傷害保険、損害賠償保険
- 保護者の不安を解消: 説明会、企業見学の実施
次にすべきこと
- 学校と協議: 協定書のひな形を入手し、内容を確認
- 保険の確認: 自社の損害賠償保険の適用範囲を確認
- 専門家に相談: デュアルシステムの導入経験がある支援機関に相談
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